タイトルミニ



私と
カバさん


はじまりのお話

そしてカバ

どんどんカバ

どっちか分かる

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【はじまりのお話】

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とある日の夕方、コビトカバ舎。
ぐるぐる渦巻くプール。
ん?何かいる?

ぷはっ
顔が現れた。
こっちを見た。目があった。

これがエボニー。
エボニー

また潜る。くるくる泳ぐ。
ぷはっ。また見てる。目が合う。
何度も。何度も。

こんなに私を気にしてくれる動物が、他にいた?


別の日、もう一度エボニーに会おうとコビトカバ舎へ向かうと
「体調管理のため展示中止」の文字。
病気?ケガ?
心配だった。もう会えないの?
気になって調べた。

ある日、見つけた文字。
「コビトカバに赤ちゃんが生まれました」
コユリ誕生である。
コユリ

公開されて見に行くと、エボニーはとても元気。
初めて出会ったコユリは小さくふやふやでとても可愛い。
私が動物園に通えるこのタイミングで出会った奇跡。

成長を見守りたくて、
すっかりコビトカバ舎へ通うようになった。
エボニーとコユリ

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【そして カバ】

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よく眠るエボニー母娘。
その隣で、カバもよく眠る。
そして気づく。
ある時間になると
カバもコビトカバも活発になることに。

初めて見たジローの遊びは豪快だった。
ブフォーと鳴いて人を呼び、バッシャバシャ水を飛ばす。
一緒にいるサツキが迷惑そうなくらい
ジローの勢いはすごかった。




部屋に帰る時間。
担当さんが呼びに来る。「帰るよ」
あがらない。プールから出ないのだ。


ごはんがあるのに帰らない動物、他にいた?
毎回、同じように遊び、同じように帰るのを嫌がる。
面白い大発見だった。

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【どんどん カバ】

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見れば見るほど、知れば知るほど面白かった。
カバってすごい。

思い切りの良い昼寝も好きだった。
時間に追われて生活していた私が目にしたカバたちは
同じ時を生きているとは思えないほどゆったりして見えた。

晴れて気持ちがいいから陸で寝よう。


少し暑いならプールで寝よう。


一度寝たら午後になるまで起きないふたり。
「他の動物を見てきていいよ」
そう言われてるみたいだった。

寝返りくらいはするけれど。
寝場所を少しは変えるけれど。
ちょうどいい時間が来るまでは
ぐっすり幸せ気分で眠る。
それが、カバスタイル。


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【どっちか分かる】

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このふたりを見極められる人がいた。何人も。
私にはわからなかった。
プールで寝ていたら、
どっちが頭かお尻かでさえ分からなかった。
どうしてわかるんだろう。


よく見てみた。
サツキの背にひだがある。
ジローの方が色が薄い。
ほっぺがピンクなのもジローだ。
鼻先はサツキの方が四角い。
耳はサツキが三角、ジローは丸だ。


分かってきた。
目だって全然違う。
サツキは二重のくりくりで
ジローは一重のキリリだ。
お尻の形も、お腹も、背中も…

いつの間にか
間違えるはずがない!と思えるくらい
分かるようになっていた。


このふたりの違いは外見だけではない。
性格もまるっきり違う。

サツキは神経質。
人見知りでなかなか顔を見せない。
けれども、いざという時は強い。しっかり者だ。
いつもジローを立てていて、譲ってあげる。
優しい姉さん女房。
大和撫子という言葉がぴったりのカバだ。


ジローは甘えん坊で、食いしん坊。
わが道をどんどん進む。
担当さんもお客さんも大好き。
そんな人懐っこさがある。
一番大好きなのはサツキだけどね。
強気に見えるけど、サツキの言うことをよく聞き、守っていた。

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