タイトルミニ



私と
カバさん


お昼寝

遊びの時間

サツキ

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【お昼寝】

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ふたりが陸ではなくプールで寝ると、
担当さんが朝ごはんのあとを水で流しに来る。
さつきはホースからもらえるその水が大好きだ。
掃除の間に水を貰おうときらっきらの期待の目を向ける。
ジローは眠さに負けることもしばしばだけど、
サツキはいつもこの時を楽しみにしていた。

お水を貰うと嬉しそうに目を閉じる。
いつまでもそうしていてほしいみたいに。
掃除の間、ずっと期待している。いじらしい。

ホースがしまわれると諦めてお昼寝開始。
プールの左端。
それがふたりのお気に入りの場所。

片方が起きて動くと、もう片方も起きて寄り添う。
そして昼寝を続けるのだ。
階段の前や右側で、向きを変えて寝たりもするが
いつもふたりは一緒に寝る。
そしてその間、ふたりはほとんど鼻先しか見せてくれない。
一度寝たら、起きるまでそのまま。
見えるのは息継ぎの時の鼻先だけ。


ふたりが起きれば、プールの水が波打つのでわかる。
動き出しの合図だ。
どちらかが起きれば、両方起きる。
起こされるのもあったけど。

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【遊びの時間】

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目を覚ますとジローは遊ぶ。
口を大きく開けて水をバシャバシャしたかと思うと、
お尻を持ち上げてまき糞。
鼻を鳴らして、重低音を響かせれば、
あっという間にお客さんが集まり、黒山の人だかりだ。
夕方の西園のスター。
自分でお客さんを呼ぶ。すごいジローだ。

上野のプールは狭い。
ジローが少し勢いよく遊ぶと、すぐにサツキにぶつかる。
サツキはジローの邪魔にならないようによけているのだけど、
どうしてもぶつかる。
サツキは「もう!」と怒ったみたいに移動するのだけれど。
ジローは一緒に遊んでほしくなって追いかけたりするのだ。
あまりにしつこいとサツキは直接いやだと伝える。
口で少しだけ水をすくい上げるのだ。
ジローは反省しておとなしくなる。
話してるなぁ。

そうこうしている間に帰舎時間になる。
担当さんが声をかけ、扉を開ける。
ふたりとも遊びを中断して、扉を見つめる。
声を聞き、言われていることもわかる。
帰らなくてはいけないと。
けれども帰らない。
階段を上がらないのだ。

撫でてみたり、水を上げたりしてみる。
けれど、ふたりはバシャバシャしたり潜ってみたり。
帰るのを嫌がっている。

さっちゃん、どうする?

ジローが視線を送る。サツキは水をすくって返す。
わかった。まだだ。
ジローはまたバシャバシャ。

あまりに帰りたがらないふたり。
プールの水を抜かれることもよくあった。
水がなくなると浮力がなくなり、身体が重くなる。
それを嫌がって仕方なしに上がってくるのだ。

プールの排水が始まるとジローは一か所に沈み始める。
ゴーゴーという水音がゴポッゴポッに変わる。
排水溝におなかをくっつけ、水が減らないようにしているのだ。

ジローが先に上がったり、サツキが先に上がったり。
サツキの後をあわてて追うジローに比べ、
サツキはその後もひとり長く粘ることがよくあった。

私はまだイヤ!

意志の強さを感じる。
そうかと思えばふたりしてすんなり帰ることもある。

毎回、何が起きるか分からない
サツキとジローと担当さん。
本当に面白い時間だった。
生きてる。考えてる。伝えてる。
色々なことを学び感じられる時間だった。

寒くなるとふたりは陸でお昼寝する。
寄り添ったり、なんとなく距離があったり、
お尻を向けて寝たりと寝姿はいろいろ。
でも正面から見るふたりの寝顔はやさしく穏やかなかわいい顔で。
ずっとずーっと見てしまう。
ほっと安心する時間を私にくれた。

日が陰り、太陽が体に当たらなくなると起きる。
ジローはサツキをよく起こしたものだ。

僕、起きたよ。さっちゃんも起きようよ。遊ぼうよ。

そしてふたりは扉の前で早く開けてと待つ。
冬はわかりやすい。

屋内でのごはんもサツキは先に食べ終える。
夏なら陸、冬ならプールで、やはりジローの食事が終わるのを待つ。
ふたりの食事がすめば、おやすみ。また明日。
そんなふたりを私は見てきた。

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【サツキ】

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いつごろからだろう。
サツキに変化が出てきた。

朝ごはん。自分の分をきれいに完食するようになった。
ジローのところにもらいに行くこともあった。
立っていられず、すぐに横になっていたのがウソのように
ジローが横になるまで付き添って立っていられるようになった。
12時近くまで立っていたこともある。
あのさっちゃんが!
眠さを我慢してずっと立っている。

サツキのダイエット作戦の成果が出てきたのだ。
身軽になったせいか、小さなスペースでターンして、
寝返りも楽にこなす。
毎年食欲が落ちて心配されていた夏バテも
その年は朝夕ちゃんと食べていて実に調子がよさそうだった。
元気だった。とても。とても。

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